「社会福祉法人はばたき設立の経緯」
昭和56年7月に開設された東京都八王子自立ホームは、昭和48年5月に、都知事以下関係局長が出席して開催された障碍者のための街づくり協議会に参加した東京青い芝の会が、ケア付住宅の必要性を東京都に訴えてから、実に8年の歳月を費やして設置された。
その間、一貫した要請行動を継続して行ってきた東京青い芝の会は、ケア付住宅検討会やケア付住宅建設運営協議会に委員を送り出し、障碍者の立場から、施設のあり方について意見を述べてきた。
施設開設後の運営についても、自らの手で名実ともに担うつもりであったが、法人格を有しないことから、やむなく社会福祉法人東京コロニーが受け皿となって、都から運営を受託する形をとった。
その後、かねてからの希望であった法人格の取得については、東京青い芝の会が中心となって、東京都の関係部署と折衝を重ねた結果、特段の配慮を得て、平成6年3月に法人設立の認可がなされ、社会福祉法人はばたきの誕生となった。
それを機に、東京都八王子自立ホームの運営が、東京コロニーから、はばたきに変更されたものである。
「自立ホームとは」
○設置に至る経緯
人間の生きる権利と自由は、それ自体が尊ばれ守られるべきであり、決して能力の程度によって割引されてはならない。脳性まひ者やポリオなどの幼い頃からの全身性障碍者こそ、この生きる権利の最も端的な具現者である。
こうした基本認識こそ、障碍者が生きてきた苦闘の歴史の中で培われた確認である。「施設か在宅か、更生か収容か、管理か放任か」という硬直した考え方を乗り越え、人間の独立への道筋を獲得していくことによって、社会的貢献をすることが重要であると考えた。これこそが「完全参加と平等」の実現である。
この観点に基づき収容施設の改善、改革を推し進めていく中で、障碍者の生活する場は多様でなければならないことを学んだ。
その一つとして、地域に根ざした自らの運営ができる小規模施設が必要であることに到達し、「ケア付住宅」要求の始まりとなった。
この「ケア付住宅」は、プライベート空間を保障する個室と、仲間と共に集団活動のできる共用部分からなり、両者が有機的に機能することによって社会的に貢献することを考えた。これが現在の自立ホームである。
○運営の方針
障碍者の独立を最大限に守り、仲間同士の連帯を強める運営を行い、障碍者が生活の主体者として、日々の計画や実践を行えるようにする。そして、障碍者もまた、社会に貢献する立派な生活人であることを目標としている。
特に、援助支援の原則として、一人ひとりの主体性を侵すことなく独立を守るために、物的援助(機械器具)を最大限に活用し、人的援助を最小限にとどめることを基本にしている。
このためホームでは、入居者の自主性、主体性を尊重し、「依存から独立へ」をキーワードに、「磨く」、「食べる」、「生きる」ことにこだわり続けている。
<害と碍> 一般に障害者というとき、「害」の字が当てられているが、これは損害・害悪の害、つまり、“そこなう”“わざわい”という意味が強いように思われる。そこで、私たちは、あえて、ここで碍という字に固執してきた。これは、“さまたげる”“へだたる”“かぎる”という意味であり、社会生活の中で、ある制約を余儀なくされているが、しかし、力強く生きたいと願う私たちの心にふさわしいと思うからである。
○課題
・自立ホームが目指すもの
自立ホームでは、障碍者が置かれている現状を正しくと捉え、社会的ハンディキャップを認識できるような生活と活動が保障されることが必要である。
したがって、とかく惰性的になりがちな生活習慣と甘えた意識を克服し、一人ひとりが仲間の問題を自らの痛みとして受け止められるようになることが、まず必要である。また同時に、この認識に基づいて話し合いを重ねる中で、お互いがそれぞれの問題点を明らかにし、その解決を目指して努力をするということを大切にする。とりわけ、幼い時から社会体験の機会を奪われてきた障碍者の「自立」「独立」の意味と、その「自立」「独立」を実現する援助のあり方を明らかにし、制度の改善、改革を障碍者自らができるようになることが必要である。
また、国内はもとより、国際的な障碍者同士の関係づくりも、必要であると考えている。
・将来構想
こうした法人の設立経緯を踏まえつつも、新たな時代に向けて自立ホーム歩み出さなければならない。平成18年5月から取り組まれた「自立ホームのあり方検討会委員会」のまとめに基づいて設置された、平成20年12月からの「基本構想検討会」でまとめられた方向に基づき平成24年11月に増築改修工事の施工業者が選定された。
平成24年4月からの「生活介護」事業の実施を図りながらの増築改修工事は、実質的には平成25年1月から着工され、平成26年3月末に竣工するに至った。
平成26年4月からは「障害者総合支援法」に基づく「障害者支援施設」として新たな出発を迎え、これまでの「ケア付住宅」から「施設入所支援」に転換することとなった。
既に、新たな利用者の受け入れもはじまっており平成27年度、28年度に向けた運営管理体制を整えつつ、合わせて、平成29年度以降の地域支援の充実を含めた新たな運営体制の構築が求められていると考えている。